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Ishida Medical Clinic

大垣市旭町の
内科・循環器科
石田内科です

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〒503-0824 大垣市旭町2丁目1-1

寄稿原稿より

本当は怖い高血圧の話   


健康診断で血圧が高いので、病院を受診するようにいわれました。でも、特に困っているわけでは無いので、このまま様子を見ようと思いますが…
 血圧が高くても、そのまま放置されている方は大勢みえます。多くの場合、高血圧が進行するまでは、特有の症状がみられないからです。また、徐々に症状が進行してきても、それが高血圧に特有の症状とは気づかない場合も少なくありません。

 
血圧が高くなると、どこかが痛くなるのですか?
 血圧が高くても、普段は何も症状が無い場合が多いと思われます。
 ただ、血圧が上昇してくると、肩がこったり、首が詰まったりする場合があります。また、のぼせやふらつきのような症状がみられる事もあります。慢性の頭痛や耳鳴りが起きやすくなる事もあります。そのほかに、動悸や脈とびに気づきやすくなる場合もあります。
 しかし、これらの症状の原因が高血圧であることに気づかない事が多く、結局は放置されてしまうのです。

 高血圧といっても、どこかが我慢できなくなるほど痛くなるわけでは無さそうだし、今は何も症状が無いので、しばらくは治療を受けなくても良いですか?
 高血圧の随伴症状は、初期の段階ではみられないことが多いので、自覚症状がみられる時にはかなり高血圧も進行していると考えてください。体にはたくさんの負担が蓄積されてしまうので、症状がみられるような段階になってしまうと、健常な状態にまでは回復できない可能性があります。 

 高血圧が進行すると、体の中はどのような状態になりますか?
 体に血液を送る血管は、新品のゴムホースのようなものを想像してください。押さえると簡単に変形して、放すとすぐに元に戻りますね。この弾力を利用して、体の隅々にまで栄養や酸素を送っています。
 ところが高血圧で血管の壁に強い力がかかり続けると、古いゴムホースのような血管に変わってしまいます。固くなったホースはヒビが入っている場所もあって、強く抑えてもなかなか変形しません。
 このように、本来はゴムのようにプリプリしていた血管がガチガチに固くなっていくのは、「動脈硬化」が原因です。

 血圧が高いままだと、どうして動脈硬化が進行していくのですか?
 心臓が血液を拍出すると血管は膨らみますが、すぐに元の形に戻ろうとする力が働くので、血液は体の隅々まで送り込まれていくことになります。ところが、血圧が高くなると、血管にかかる力も強くなり、血管の内側の壁は固くなっていきます。そして、血管の弾力が低下するので、膨らんだ血管が元に戻る力も弱まることになり、血液を送り込むのに今までよりも大きな力が必要になります。心臓は収縮力を強めることで、今までどおりに体中に血液を送ろうとしますが、その結果として、さらに高血圧が進行していくという悪循環に陥ってしまうのです。
 高血圧が進行することで、血管にかかる力はさらに強まり、血管の壁はいっそう劣化することになります。高血圧を放置しておいても、動脈硬化が進行する可能性は高くなるばかりですが、自然に回復する可能性は低いと思われます。

 悪くなった血管でも、そのまま血液が流れていれば特に問題は無いと思いますが?
 血管の劣化が進行すると、大きく分けて2つの道をたどることになります。1つは血管の破損、もう1つは通過障害です。
 血管が枝分かれする場所や急カーブの場所などでは、壁に当たる血流が他の部位よりも強くなります。また、血管の壁の構造も、周囲の血管と比べると薄くなっていることが多いため、血管の壁が伸びやすくなってしまう事があります。ゴム風船を膨らますとき、初めは強い力で吹いてもなかなか大きくなりませんが、十分に膨らんだ風船は弱い力で吹くだけでも一段と大きくなります。血管の一部分がゴム風船のように膨らんでしまったことに気づいて、あわてて血圧を下げようとしても、弱い力でも膨らみ続けて、ある瞬間に破れてしまいます。
 動脈硬化によって血管の内側の壁が肥厚して盛り上がってくると、血液の通り道が狭くなってしまうので、そこから先に十分な栄養や酸素を送ることができなくなってしまいます。そのため、十分な血液が流れていかない、「酸素欠乏」や「栄養失調」の部分ができてしまいます。特に糖尿病や脂質異常を合併している場合は、このような血管の劣化がすすみやすくなります。
 また、動脈硬化によって肥厚した血管の壁には構造的に脆い部分が残っているので、高血圧による強い血流がぶるかることで、簡単に傷がついてしまう事があります。その時、傷のついた壁にかさぶたのよう血の塊り(血栓)がくっつくと、そこに新たな血栓が次々とくっついて大きな塊となり、短時間のうちに血管の中が詰まってしまいます。そこから先には酸素も栄養も届かなくなるので、「窒息」や「餓死」の部分ができてしまいます。

 血液の流れが悪くなると、体の中で何か困った事が起きるのですか?
 体中のほとんどの場所は血液によって酸素や栄養を運んでもらっているので、体内のあらゆる場所で、いろいろな不調が起こりやすくなります。なかでも、心臓や脳はたくさんの血液を必要とするため、酸素不足の状態が続くと、心臓も脳も本来の働きができなくなります。
 また、急激に酸素が届かなくなると、心臓も脳も「窒息」して短時間に壊れてしまいます。

 心臓や脳が壊れたら、治るのに時間がかかりますか?
 心臓も脳も生命維持にとって重要な臓器です。これらの臓器が完全に壊れてしまうと、それは「死」か「寝たきり」を意味することになります。心臓や脳は、壊れてしまうと元に戻すことができないのです。
 また、壊れた範囲が狭くて、日常生活に復帰できたとしても、それから後の人生は壊れかけの心臓や脳とお付き合いしていかなくてはなりません。
 不幸にしてこのような病気になられた患者さんのなかで、いったいどれだけの方がご自身の発症を予測されていたでしょうか?なかなか治療を開始できない方や、途中で治療を放棄されてしまう方の大半は、「自分に限っては」そのような病気にはならないと思ってみえます。
 取り返しのつかない体になってしまってから、何年か前に逆戻りして、そこで血圧の治療をすることはできないのです。
 壊れてからでは遅いのです。

高血圧がとてもこわいことがわかりました。でも、血圧の薬を始めると、いつまでも飲み続けなければならないので、やはり治療には前向きにはなれません。高血圧や動脈硬化を元どおりに治すことはできないのですか?
 高血圧には色々な原因があります。そのなかには、家系(遺伝)的なものや加齢等の、防ぎようのないものもあります。しかし、生活習慣や喫煙などの改善できるものも多いので、それらの要因に確実に対処していくことの方が大切です。
 血圧の薬を開始するタイミングは、動脈硬化の進行具合や、高血圧の原因によって変わってきます。動脈硬化が初期の状態ならば、運動療法や食事療法のみで高血圧が改善する人も多くみえます。また、高血圧の改善までに時間がかかりそうな人の場合は、血管への負担が続くことを考えて、一時的に血圧の薬を使うこともありますが、高血圧の原因が解消されれば、降圧剤は終了できる場合がほとんどです。大切なことは、動脈硬化が進行する前に、高血圧の原因を解決してしまうことです。
 また、動脈硬化で血管の内側の壁が厚くなってしまった場合も、コレステロールの異常を治療していくことで、病変が改善される場合もあります。
 ところが、高血圧を長期間放置しておくと、動脈硬化が進行して血管の状態も悪くなってしまいます。血圧の薬を見合わせたまま運動療法や食事療法だけを続けても、血圧はなかなか下がりません。せっかく高血圧に取り組んでも、血圧が下がらない状態では、動脈硬化の進行を止めることはできません。まずは血圧の薬を開始して、脳出血や心筋梗塞等の高血圧による合併症を防ぐことを第一の目標とすることが重要です。

 薬さえ飲んでいれば、癌のように死ぬことも無いから、高血圧は安心しても良いですね?
 動脈硬化は癌と違って、その進展を確実に防げます。しかし、放置したままの高血圧で、体のいろいろな部位に合併症がみられるようになってしまうと、その予後は癌よりも悪くなるといわれています。
 ですから、特定健診等を積極的に利用して、高血圧やその原因となるような生活習慣病の治療に、早い時期から取り組んでください。
 検診結果で再受信の連絡があった方には、動脈硬化が進展しないように、当院でも色々な角度からお手伝いさせていただいております。
 患者さんのなかには、「薬さえ飲んでいれば、何も心配は要らない。」と考える方もみえます。極端な患者さんの場合、「診察は要らないので、薬のみできるだけ長期に処方して欲しい」というご要望もあります。
 動脈硬化の進展の具合を正確に把握して、高血圧の原因と向き合っていくために、毎回の定期受診がとても大切です。季節やその時々の体調で降圧剤の効き具合は大きく変わってきます。また、高血圧の原因にどれだけ対処できたか、仕事や周りの環境がどのように変化してきたかによって、血圧の薬を調整していかなければなりません。そして、次回の受診までの目標がはっきりとすることで、自信をもって毎日の治療に取り組んでいただけるようになります。
 このような毎日の積み重ねの結果を、主治医としっかりと確認しながら、確実に高血圧をコントロールすることで、将来にわたって動脈硬化の進展を抑えることができるのです。
 放置したままの高血圧は癌より怖いかもしれません。でも、癌とちがって確実に進展を防げるのです。

2013 医療&介護ガイドブック


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