本文へスキップ

Ishida Medical Clinic

大垣市旭町の
内科・循環器科
石田内科です

電話でのお問い合わせはTEL.0584-81-0022

〒503-0824 大垣市旭町2丁目1-1

寄稿原稿より


痛くなってからでは、もう遅い?   - 本当は痛い生活習慣病のお話 −


健康診断の結果通知で、生活習慣病の可能性があり、受診をすすめられました。でも、最近は仕事の忙しい日が続いているので、なかなか病院を受診できません。体調はすこぶる良好です。
 体の具合が悪くなれば、すぐに受診するつもりです。生活習慣病では、どこか痛くなったり、具合が悪くなっ たりするのですか?
 生活習慣病の診断がされても、病気がかなり進行するまで、目立った自覚症状がみられません。だから、多くの人にとっては「痛くない」病気で、特にどこも具合が悪くないまま過ぎていくことになります。

どこも痛くならずに、具合も悪くならない病気ならば、すぐに病院に行く気になれませんね。
 痛くなったり、どこかが具合悪くなったりするのは、体が危険な状態を回避するために警告を発しているからです。しかし、生活習慣病では、病気がかなり進行するまで、痛くなったり、具合が悪くなったりしないことの方が多いのです。

生活習慣病ではどうして、進行するまで、警告が発信されないのですか?
 何十億年の歴史の中で、つい最近の人類だけが、食べ物を探すための運動をしなくなり、体が要求するよりもたくさんの物を食べるようになってしまいました。この状態が毎日くりかえされるようになってから、今までの動物がかかったことの無い新しい病気で、命を落とすような事態となってしまいました。
 地球の歴史からみて、ほんの少し前に現れた、ヒトだけを冒す病気に対して、どこで警告を発信すれば良いのか、体もよくわからないままなのです。

生活習慣病は警告を発することができない病気なので、自分で気づくことが難しそうですね?
 病気が進行していく途中の段階では、どこかに痛みを感じることは殆どありません。ところが、ある段階を越えると、急激に痛くなります。重症になるほど、痛みは強く、突然に起こるこ可能性が高くなります。そして、痛くなってからでは、元の健康な状態に戻せないところが、他の病気との大きな違いです。

生活習慣病では、どこが痛くなるのですか?
 頭から足先まで、いろいろな所で、痛みが出てくる可能性があります。たとえば、頭痛の原因となる代表的な病気としては、脳出血やくも膜下出血があります。血圧が高いほど、脳の血管に強い力がかかるために、血管の弱いところで破れてしまう病気です。

胸が痛くなるのは、心臓の血管が詰まるからですか?
 心臓の筋肉に血液を送る冠動脈に狭いところができると、早歩きや階段を上ったりする時に、胸が締めつけられるような痛みがみられるようになります。安静にすれば症状が消失する状態で、狭心症と呼ばれています。狭心症の段階では心臓の血管は詰まっていませんが、冠動脈が突然に詰まってしまうと、その先の心臓の筋肉が窒息状態となり、それまでには体験したことの無いような強い胸の痛みとなることがあります。このような状態を、心筋梗塞と言います。窒息した心臓の筋肉は生き返らせることが難しく、病院へ運ばれる前に、心臓が止まってしまう事も少なくありません。

心臓とは別の原因でも、胸が痛くなることがありますか?
 心臓の出口につながっている、体中に血液を送り出す太い血管を大動脈といいます。血圧が高いと、大動脈の弱いところが風船のように膨れて動脈瘤となり、そこに強い力がかかり続けると、破れてしまいます。胸が痛い時はすでに破れかけている状態であり、完全に破れてしまうと、病院に運ばれるまでに心臓が止まってしまいます。
 それから、心筋梗塞と同じくらいに怖い病気に、大動脈解離というものがあります。血圧が高いと、大動脈の内側に裂け目ができてしまうことがあります。大動脈が裂けた瞬間、突然に胸や背中に激痛が走ります。裂け目が心臓の近くまで拡がると、血管の裂け目から漏れた血液が心臓の周りに溜まって、圧迫された心臓は動けなくなってしまうので、非常に危険な状態となります。また、冠動脈の付け根が潰れてしまえば心筋梗塞になる場合も多く、診断がついたら直ぐに、緊急手術をする必要がありますが、元気に退院できない場合も少なくありません。
 肺塞栓症も突然に胸が痛くなって、呼吸も苦しくなります。長期間の寝たきりや、手術後に起こりやすくなりますが、肥満の人ほど発症しやすく、救命できないことも少なくありません。

胸が痛くなっても、原因は心臓だけには限らないのですね。ところで、頭や胸とは別のところが痛くなる時もあるのですか?
 大動脈解離による血管の裂け目は、心臓の方向に拡がるだけでは無く、腹部から足に向かって進展する場合もあります。その場合は、背中から始まった突然の激痛がお腹から腰の方へ移動することになります。血管が枝分かれする所まで裂け目が拡がると、内蔵や下肢への血流が突然に途絶えてしまうことになり、お腹や足が突然の激痛に襲われます。腹部臓器や下肢の大半の筋肉が壊死になれば、致死的な状況に陥る可能性は高くなります。

生活習慣病が進行すると、お腹も足も痛くなるわけですね。他にも生活習慣病が原因で、お腹が痛くなるような病気はありますか?
 内蔵を栄養する血管は、脳血管や冠動脈と同じように、生活習慣病によって動脈硬化が進行していきます。悪くなった血管のところで通過障害が起こると、腸管へ送る酸素と栄養が足りなくなくなってしまいます。その結果、腹痛や血便が起こりやすくなり、この状態は虚血性腸炎と呼ばれています。慢性的な胃腸炎や便秘症なども、動脈硬化が原因である可能性は十分にあります。しかし、対症療法だけでは、症状は改善しません。
 また、心筋梗塞と同じように、腸管を栄養する血管が突然に詰まってしまう事もあります。突然の激しい腹痛となりますが、診断がついて手術になる時点では腸管が広汎に壊死している場合が多く、救命の難しい病気です。
 それから、大動脈は、ヘソの裏側のあたりも膨らみやすくなっています。この腹部大動脈瘤も、破裂してしまうと、病院にたどり着くことが難しい、大変に怖い病気です。

生活習慣病も放置しておくと、ずいぶんと『痛そうな』病気に進展していくことがわかりました。自覚症状がみられる前に、病院にかかる気持ちになりました。
 多くの患者さんに、このようなお話をすると、「病気が怖いのは分かっているけど、自分は『きっと』大丈夫だから」と言われます。
 高血圧・糖尿病・脂質異常・肥満の診断をされても、的確な治療を受けられれば、今回お話したような痛い思いを体験する事は無いでしょう。
 ただ、毎日の良くない生活習慣がそのまま積み重なってしまうと、軌道修正することは難しくなっていきます。その結果として、日本人の3分の2近くの方々は、生活習慣病によって亡くなっていることも隠しきれない事実です。
 突然に心臓が止まってしまうような状況の患者さんも、ほんの1年くらい前には、「自分に限っては大丈夫」と思ってみえたかもしれません。
 今回お話した、「とても痛くて、心臓が止まってしまうかもしれない」ような怖い病気は、生活習慣病の初期の段階からしっかりと管理すれば、進行をくい止めることができます。
 わずかでも検診で異常がみつかれば、できるだけ早い時期に、元の健康な体に戻してあげてください。
 体が我慢しきれなくなって、警告を発する事の無いように、ご自身の体をいたわってあげる必要があるのです。
 今回お話した「痛くて、怖い」病気はどれも、血管が傷んで劣化する事で発症します。血管はとても大切なのです。血管をやさしく大切に守ってあげてくださいね。
 
2014 医療&介護ガイドブック

石田内科ビルダークリニック

〒503-0824
岐阜県大垣市旭町2丁目1-1
TEL 0584-81-0022
FAX 0584-81-0021
www.facebook.com/ishidanaika