本文へスキップ

Ishida Medical Clinic

大垣市旭町の
内科・循環器科
石田内科です

電話でのお問い合わせはTEL.0584-81-0022

〒503-0824 大垣市旭町2丁目1-1

寄稿原稿より


本当は怖い水の話   - 下の血圧が低いのは良いことですか? −


お薬を開始してから、血圧はずいぶんと下がってきましたが、下の血圧はまだ90くらいから下がらないので心配です。これ以上、お薬は増やしたくないのですが、何か良い方法はありますか?
 上の血圧(収縮期血圧)は降圧剤の効果で正常範囲まで落ち着いてきましたが、下の血圧(拡張期血圧)が十分に下がっていない状態ですね。上の血圧と下の血圧は、体の中のどのような状態を現しているのでしょうか?それぞれの血圧が上がる原因がわかってくると、どんな点に注意して治療に取り組んでいけば良いのか、目標もはっきりとしてきます。

上の血圧はどのようにして高くなるのですか?
 上の血圧(収縮期血圧)を考える時は、おもちゃの水鉄砲を想像してください。竹筒で作った、大きな注射器の形のものです。そして水を遠くへ飛ばせるように、出口にはホースを取り付けます。この注射器型の水鉄砲を心臓に例えて、出口に取り付けたホースを血管と想像してください。
 出口のホースを細いものにすれば、水鉄砲のピストンを強く押さないと、なかなか水を飛ばすことができません。また、出てきた水は遠くへ飛び散りますが、水の量はそれほど多くないので、ピストンを押しきるまでに時間もかかってしまいます。

出口のホースが細いと、高血圧になるということですか?
 その通りです。
 心臓は休むことなく強い力を入れ続けるために、疲れが溜まってきます。初めは心臓の筋肉をたくましくする(心肥大)ことで、強い力を入れ続けようとします。しかし、筋肉が太くなるにつれて、酸素や栄養が行き渡らない心筋も増えてくるので、収縮する力が弱まることになります。また、心臓の中に血液を充満させようとしても、筋肉が厚く固くなるので十分に膨らむこともできなくなってしまいます。
 次に血管の方に目を移しましょう。心臓から送り出された血液は、強い勢いで血管に当たり続けるので、血管の壁は傷んできて、固く変性してきます。これが動脈硬化の状態です。しかし、血液の勢いは強くても、送り出される量はそれほど多くありません。そのため、かえって体の隅々まで血液がまわらなくなり、体中の細胞は酸素と栄養が不足している状態となってしまいます。

血圧の薬で、状態は良くなるのですか?
 血圧のお薬には、色々な種類があります。その中でも、よく使われているものは、出口のホースを太くする作用のあるものです。ホースが太くなれば、ピストンを押す力を弱めても、簡単に水を飛ばせます。
 早い時期からお薬を使えば、心臓の筋肉が太くなって動きが悪くなったり、血管が痛んで固くなる事を防ぐことができます。

血管が拡がる薬を使えば、血圧が下がってくることが理解できました。血圧の薬は種類が多いと聞いていますが、どの薬も血管を広げるだけなのでしょうか?
 心臓は水鉄砲のような仕事を、休まずに続けています。その回数は1日に10万回くらいになります。ここで筒に入っている水の量を減らせば、ピストンを押す距離が減るので、心臓は仕事が減って楽になります。
 また、同じ時間でピストンを押すとすれば、その力も軽くて済むので、水を出すのに勢いをつける必要も無くなります。
 そのためには、体内を循環する水分量を減らす必要がありますが、不要な水分摂取を減らすだけでも、血圧は低下する傾向にあります。しかし、水分を制限するのは簡単では無く、実際は血管拡張剤に利尿剤を組み合わせることで、確実な効果を期待することになります。

水分はたくさん摂るように、テレビでも良く言われているので、毎日たくさんの水を飲むようにしています。
 現実的にに多くの方が、本当は欲しいと思っていないような水を無理に飲んでみえます。
 ここで下の血圧(拡張期血圧)を理解するために、水鉄砲のホースの先に今度は、しぼんだ風船を取り付けたものを想像してください。ピストンを最後まで押し切った後の、風船の膨らみ具合が下の血圧に相当します。筒の中の水が多ければ、風船は大きく膨らみ、風船にかかっている力も強くなります。また、風船を固い材質のものに変えると、同じ水の量でも、ピストンを押し戻そうとする力は強くなります。
 実際の心臓は、血液を拍出し終えると出口に蓋をして、送り出した血液が心臓に戻らないようにしています。そしてすぐに心臓は再び膨らみながら新しい血液を貯めて、次の拍出に備えます。この心臓が膨らむ間の、心臓から遮断された血管にかかっている力が、拡張期血圧となります。
 拡張期血圧が高い人は、血管の中の水の量が多いことになります。そのため、足がむくみやすい、足やお腹が冷えやすい、頭痛が起きやすい、便秘や下痢になりやすい、夜にトイレで目を覚ましやすい等の不具合が見られる傾向があります。また、風船の材質が固くなるのは、血液を溜めておく血管の壁が固くなる状態に相当するので、全身の動脈硬化が進行するほど拡張期血圧も高くなることになります。

でも、水を減らしたら、血液がドロドロになって脳梗塞になりませんか?
  通常の生活のなかで、体を動かして汗をかいたり、のどが渇けば水分を補給できる人であれば、水分の必要量はご自身の体がわかっているはずです。これ以上は飲みたいと思わないのに、さらに水分を摂り続けても、体にとっては弊害の方が多くなりそうです。
 血液ドロドロの脳梗塞は恐ろしい病気ですが、血液の勢いや力が強すぎると血管が破れて脳出血になります。脳梗塞とどちらが起きやすいのか単純な比較はできませんが、脳出血の予後はあまり良くありません。また、高血圧の方に発生しやすい大動脈瘤も、強い勢いの血液が血管を押し続けた結果、血管の壁が薄く伸びきって膨らんでしまった状態で、大動脈瘤が破裂すれば救命は困難な状態となってしまいます。

それでは、水分はどれだけ摂るのが理想的ですか?
  ご自身で水分調節ができないような高齢の方や乳幼児の場合は、脱水状態を見逃さないために、希望されているよりも多くの水分を摂っていただく場合も少なくありません。
 しかし、本当に必要とする水の量は体が知っています。必要な時はのどが渇き、十分に摂れれば、それ以上に水分を欲しくなくなります。体から伝わってくる情報に、いつも耳を傾けることで、大切な体をいたわってください。
 ただし、塩分を多く摂る人は、体内の塩分が濃くなります。そこで、塩分を薄めるために、体はたくさんの水が欲しくなります。毎日の食事で、多くの塩分や水分を摂り続けていることに気づかない方も少なくありません。
 本当に怖い塩と水のお話は、次の機会に予定しています。お楽しみにしてください。

2015 医療&介護ガイドブック 


動脈硬化が進行すると拡張期圧(下の血圧)が高くなるのは本当か?
 この原稿を寄稿してから、拡張期圧が何を現しているのか、もう一度考えてみました。
 心臓が血液を駆出すると、血管に圧力がかります。その時、正常の血管壁は引き伸ばされますが、もとの形に戻ろうとする弾力が備わっているため、その力が加わる拡張期の血圧は高くなります。逆に収縮期は、血管が膨らむことによって力が吸収される分だけ、血圧は下がっていることになります。
 動脈硬化が進行すると、ゴムホースのようにプヨプヨしていた血管が、水道管のようにカチンカチンになります。このような状態になると、心臓から受ける力を他に逃すことができないので、収縮期血圧は上昇します。また、血管が元に戻る力が低下しているので、拡張期圧は下がってきます。
 心臓の出口に付いている蓋が閉まらない時も、「下の血圧」が低くなります。
 冠動脈の灌流圧は、拡張期圧で規定されます。心臓が緩んだ時に、冠動脈に血液が流れるからです。そのため、拡張期圧が低い方は、心筋虚血に陥る可能性が高くなっています。症状が出ていなくても、慢性的な酸素不足・栄養部足に陥っているかもしれません。
 収縮期血圧は上昇に注意、拡張期血圧は低下に注意です。どちらも放置しておくと、危険な状態となります。
2016.06 追記
 

石田内科ビルダークリニック

〒503-0824
岐阜県大垣市旭町2丁目1-1
TEL 0584-81-0022
FAX 0584-81-0021
www.facebook.com/ishidanaika